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日立、ノーテル・ネットワークスからLTEの基幹システムに使うソフトウエアシステムを買収(’09/1/9)

 

日立の発表によると、従来から提携関係にあったノーテルのLTEに関連するソフトウエア資産全体をノーテルから買い取り、KDDI以外にも販売できる体制になったということだ。日立はノーテルと共同でKDDI向けにLTEの基幹システムを受注していた。

 

この発表で一番安心したのはKDDIだろう。LTE導入に失敗すれば社運が傾きかねない。日立も大変だろう。ソースコードは開示されるのだろうけれど、だからと言ってそれで従来通り自社だけで開発を続けられるほどの高級ソフトエンジニアが潤沢にあるとも思えない。多分ノーテルから高額の技術コンサルがあるのだろう。ちなみに、筆者はノーテルの欧州の通信ソフト部門を買収した企業と親密な関係にある。

 

かってノーテル(昔のノーザンテレコム)で新規事業に従事し、NTTに500万加入分の電話交換機を販売したりダイヤル116番用のネットワークACDビジネスを推進していた筆者にとって感慨深いものがある。というのは、倒産したノーテルの前に、同じく倒産したControl Data Corp.(CDC)に勤務していたことがあるからだ。両社とも世界で6万人強の社員を抱える超ハイテクIT企業だった。CDCの倒産は間違ったアーキテクチャのスーパーコンピュータの開発資金をひねり出す為にビジネスユニット(タイムシェアリングサービスとか、ディスクドライブなどの周辺機器)を小分けにして売り出したあげく開発に行き詰まったせいだが、ノーテルの場合は、通信機器産業の構造変化の激変に適応しきれなかったせいだろう。数千万円で売れていた交換機が数100万円のサーバやルータに置き換わるのだから。昔の様に潤沢に儲かっていた時代に身に付いた金使いの体質は、頭では分かっていても体はなかなか忘れない。つまり、財務もマネージャも支払い許可を求める書類には、心ならずも勝手に手が動いてサインしてしまう、ということだ。

 

CDCの場合は、或る朝社員が出社しようとするとビルがロックされていて、社員全員が広場に集められ、全員解雇の通告を受ける、というドラマチックな展開になった。CDCから先にスピンアウトしたクレイ・リサーチに、多くのスーパーコン開発技術者が移れたのが救いだった。ノーテルの場合は、旧ノーテル社員のコミュニティーがネット上にできて、お互いに情報交換したり助け合っている。ちなみに、筆者もその一員である。

 

しかし、昔の上司から、「退職金や企業年金も、処理が全てストップしているので払ってもらえないんだよ。家内にはパートに出てもらわないと。」と聞いた時には日米の相違を超えて同一のセンチメントを共有したことであった。