ブログ / Blog

クラウドでまた負けた日本。何故だ?(2010//7) 

 

日経ビジネスの2月8日号に西垣浩司氏(情報処理推進機構理事長、NEC元社長)が「クラウドの主導権を奪え」という題で寄稿している。副題に「IT業界にクラウドコンピューティングの大波が“新産業”として押し寄せる」とか、クロージングに「クラウドや組み込みソフトをいかに活用するか。ここに日本の浮沈がかかっていると言っても、過言ではありません。」と言っている。クロージングはまあ良しとしても、副題は頂けない。雑誌の記事の副題だから、幾分センセーショナルな表現になったのだろうし、だからと言って寄稿者が表現通りの認識だとは限らないとは思うのだが。 

 

この副題に対して筆者は、週刊誌の見出し的に、「クラウドでまた負けた日本。何故だ?」と言いたいが、そうすると日本のIT関係者に嫌われるだろうから、「クラウドで何故日本が世界にイニシアティブを取れなかったのか、日本のIT首脳は真剣に考えた方が良くはありませんか?」と優しい表現にして言いたい。これを考えることによって、日本のIT業界の本質的な問題が浮かび上がって来る、と思うのだ。

 

「早い話が、クラウドに世界で一番適している国はどこですか?」という質問にどう答えますか?正解は「日本」。ついでに韓国も正解に入れよう。何故か?世界で一番ブロードバンドが普及している国だからだ。少し考えれば分かる話しだが、クラウドというのは遠隔のサーバとthin clientが情報のやり取りをするという、1月19日に書いたTSSに近いコンセプトを基にしている。だから広帯域で安定した通信路の確保が必須なのであって、この環境が世界で一番整っているのが日本なのだ。何故そうなったかというと、日本の官民が必至になってe-Japan構想を実現したからなのだ。

 

可笑しいのは、e-Japanを実現したあと、このブロードバンド環境をどう使ったらいいか、という議論が真剣に行われたことだ。まさか、通信設備を売りたいが為だけにeJapanを推進した訳でもなかろうが、そう疑わせる節がある。例えば、ビデオ配信会社に、帯域を使いすぎるから控えろ、とか、ファイル交換ソフトは真夜中に帯域を使い過ぎるから怪しからん、という意見を業界のトップが当然の様に言っていた。こんな話はせいぜい担当部長クラスが言えば良いことであって、筆者としては業界のトップには日本の新しい方向性、クラウドの旗を振って頂きたいところだった。

 

というのは、クラウドのコンセプトなんて私が1990年代にすでに日本でさんざん推進していたからだ。その夢は朝露の様にはかなく消えてしまったので、無念の気持ちを込めて斯く申し上げる次第だ。

 

1990年後半に筆者はIBMの子会社のロータスにてキャリアプログラムの責任者だった。ロータスノーツを使って世界のキャリアがスムースなメッセージングサービスを提供する様になろう、というのが主objectivで、これはIBMが子会社のロータスに託した世界プログラムだった。例えば1998年だったと思うが、ロータスが世界の主要キャリアのトップをニューヨークのホテルに集めて「世界キャリアサミット」(だったかな?)を催したことがある、筆者も分割前のNTT,KDDIになる前のKDDに共に参加して頂いた。その中でIBMのビジョナリストが「ITは将来サービスとして電気や水道の様になります。コンセントにコードを差し込めば電気が直ぐ利用できる様に、通信コンセントにケーブルを差し込むだけでコンピューティングリソースが直ぐ付ける様になります。」と言っていた。従って会議の趣旨は、「ではロータスノーツを使ってそれをどう実現するか、ご一緒に考えましょう。」というのだった。

 

もう10年以上前の話だ。だから、2010年に雑誌で「IT業界にクラウドコンピューティングの大波が“新産業”として押し寄せる」と言われても、オイオイ、としか思わない。

 

この項続く。