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クラウドでまた負けた日本。何故だ?続きの続き(2010//20) 

市場を支配する法則を明確に意識するということ

 

3月7日のブログでは、「次回は、何故そうだったのか、どうすれば良かったか、を概観したい。」と書いた。3月15日のブログでは、その回答の一部を述べた。それは、WILCOMを例に取り上げたのだが、「ムーアの第二の法則」に従って市場環境が変化することを理解してその上で経営戦略を立てるべきだった、ということだ。

 

つまり、言いたいことは、市場を支配する法則を明確に意識し、それを忘れないで経営する、ということだ。そうすれば「市場がこんなに変化するなんて思っていなかった」などと言うことにはならない。WILCOMの破綻の原因はもっと他にもあると言う人もいるだろう。破綻は複雑な事象だからだ。だが、そのいくつもの現象(破綻の原因)が何故発生したかを考えれば、共通する法則に行き当たるだろう。

 

同じ様なチャンスが与えられたにも拘わらず日本が米国の様にクラウドビジネスを立ち上げられなかったのは、日々の収益や問題に捕らわれて長期(10年単位)の戦略を継続して(忘れないで)考えていなかったから、に尽きるだろうと思う。NTTなどはそれが出来る会社だったはずだが、残念なことに、この会社は当時は電話事業が本業で、総合IT企業に脱皮しようともがいていた時代で、なお且つ分割という大事件に対応せねばならなかった。1990年代後半の話だ。分割後のNTTグループ会社からは、ロータスNotesで商売できる様にしてくれ、と大いに頼りにされ、筆者のお客さまだったにもかかわらず接待されたりしたものだった。 

 

筆者の手元に「iモード・ストラテジー」という本がある。2000年に夏野剛さんが発行した本だ。NTTドコモのマネジャーに、「ドコモの現在と将来を知りたかったらこの本を読んだら」と言われて購入した。この本にはドコモの10年計画が書いてあり、その通りに事業が進められている。iモードの成功が海外、特に欧州の通信キャリアに与えた衝撃がどれだけ大きかったかは、当時海外のキャリアの集まりに何度も出席したから筆者は良く知っている。

 

だから、クラウドで日本が主導権を取れなかったのは、日本人が無能だったからではないのだ。iモードで長期的な、革命的な成功を収めた日本企業(NTT)が、なぜ今日の事態を招いたのか? この稿続く、としよう。