就職戦線異状なし(2011//13)

大学生が欲しいのは大学教育ではなく、卒業証書と社員証なのだ。

 

日本経団連が「新卒採用の会社説明会を大学3年生の12月以降とするなどの対応策」を打ち出し、日本商工会議所が同調した。就職できない上安に駆られた大学生が3年生になって間もなく就職活動を始めたり、海外の大学への留学を諦めたりした為の対策なのだが、大学側から「こんなんじゃ教育なんてやってらんねえ」という上満が大分出たことだろう。時代が昔へ戻った感じがする。昔の様に、早晩「就職協定破り」が出て、この措置は見直しが求められるだろう。いつになったらこういう社会主義的発想を卒業するのだろうと思う。根本的な解決になっていないので筆者からソリューションを提案しよう。

 

昨年12月25日のブログでも述べたが、「ドリルを買った人が欲しかったのはドリルではなく、ドリルで開けた穴なのだ。」という論理を敷衍すれば、「大学生が欲しいのは大学教育ではなく、卒業証書と社員証なのだ。」ということになる。その証拠に企業は卒業生の学力ではなく、「頭の良さそうなの」を採ろうとする。一流大学卒が欲しいのは素頭が良いことが入試でフィルタリングされているからである。正直言って、こんなことを公的な場で言う人はいないだろうが、企業は大学の教育能力なんて評価していない。大学4年間の専門教育なんて大したことは無く、会社に入ってからみっちり教育した方が余程や有効だと思っている。大学側も、当然否定するだろうが、それに甘んじて来た(ところがあることは否めないだろう)。

 

専門教育が大切だと考えた政治家や官僚に同調して大学が修士、博士を大量に作ったが売れ残りが大量に発生した。企業にしてみれば、今さら企業で教育するには年を食い過ぎてしまっているし、必要でもない専門性を売り込まれても、というところだ。企業勤務の文化を身に付けるには20代前半までなのだ。

 

就職率が低迷しているのは、文部省がやたらと大学を認可した為に、大学生が大量に増え、なお且つ企業が新卒を吸収できる能力には限りがあって、採用の絶対数が上変だからだ。こういう構造的変化に企業側が従来通りの採用方法と教育方法を続けるのは土台無理がある。

 

だから、大学の機能の半分を企業に移してしまうことを提案する。 つまり、企業は大学生2年生、3年生を内定してしまうのだ。そうすれば、大学生は欲しいものの1つ「社員証」を得る権利をゲットしたことになる。大学生はこれで一安心だ。但し、大学を卒業できなければ入社できない契約にする。しかしこのままだと大学生が遊び呆け、大学が卒業証を濫造する恐れがあるから、企業が大学生に試験を行って、卒業に必要な単位の認証を行うことにする。就職したい大学生は必死に勉強するだろう。しかし、大学が、企業が求める学力を養成できないかも知れない。だから、企業は自社が求める新入社員の学力を詳細に定義して、卒業までに達成すべき目標を内定者と大学に提示する。大学も必死になって教育するだろう。企業は定期的に進捗を評価し、必要なら企業自身が教育する。こうして、大学の3、4年を必死に勉強した大学生は無事必要な単位を取得し、卒業して目指す会社に就職できることになる。怠けすぎた大学生は内定を取り消されて路頭に迷うことになるのだ。

 

2年間も準備期間があれば、面接のテクニックで誤魔化そうなんて無理だ。筆者が喫茶店で小耳にはさんだ会話。「面接どうしよっか。私ずっとバイトだったでしょう?余り勉強してなくって。」「スマイルよ、スマイル!」

 

この案の問題点は、大学入試で苦労した後の楽しい4年間の大学生活がエンジョイできなくなることである。若い時代は色々無駄なことをして見るのも人間性を豊かにする上で必要だ、と反論する人は必ずいるだろう。正論である。そういうユニークな人はそれなりに魅力があるだろうから、企業は面接なりをして、時期に拘わらず特別に採用すれば良いのである。たとえそれがスマイルであっても、世界一周旅行の経験でも。