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 NECのパソコンビジネスの運命は如何に(2011//1)

 

HP、DELL、Panasonic、IBMとどう違うのか?

 

NECと中国レノボグループがパソコン事業での提携を決めた。何も、レノボじゃなくたって、とは思うが、同時に、かって一世を風靡したPCのNECがなぜHPやDELLやIBMの様になれなかったのか、とも思う。筆者は70年代、80年代にタイムシェアリングサービスに従事したが、売上が数年の低空飛行の後ロケットの様に伸びていったころにパソコンが市場に本格普及した為ビジネスが低迷し始め、ついに撤退に到った。そういう訳で、日本のパソコンメーカーの動向にはずっと注目し、展示会などでは説明員と話して言葉の裏を嗅ぎ取ろうとして来たのだった。

 

HPはConpaqやDECを吸収合併してひたすら世界市場で規模の利益を追い求めるというのが基本戦略だったろう。工場を日本に持って、日本生産品質を訴求している。確かに、実感として、日本で生産した品質は良い。工場のアセンブルラインだけの問題ではなく、部品選びも慎重に行っているのだろう。対照的なのがDELLだ。中国に工場を持ち、ひたすら低価格、低販売コストを目指している。

 

DELLのPCの箱を開けるとディスクドライブとかボードがクリップで留めてある。他方国産のPCはそういうのをキチンとネジで締めている。どっちが製品として優れているだろうか?国産の方が振動や衝撃に強いから国産の方が優れているだろうか?でもクリップ留めの方が、低賃金未熟練工が短時間で複雑な製品構成要求に柔軟に適応できる様になる。市場占有率を見るなら後者が正解だ。

 

筆者はPanasonicLets Noteを10年前から使っていた。当時PanasonicのPCは有吊ではなかったが、A4サイズで電池だけで10時間稼働するラップトップはPanasonicしかなかったからだ。このモデルも、次に買った後継機も酷使に耐えた。さすが日本製、と言いたかったが、酷使に耐えうる設計にもなっていた。Panasonicはインターネットを利用してユーザの声を集め、それを実現する様に製品仕様を決め、製造していった。技術者の嗜好やパソコンを余り使わないであろうデザイナーの好みで作っていたわけではない。おかげで他社が類似の仕様で追随する様になり、LetsNoteは価格が高くても売れるようになり、筆者にとって高価過ぎて買おうか買うまいか躊躇する程になった。ハードウエア主体のビジネスモデルを突き詰めるとこの様な形になるのかと、一種の感銘さえ受ける。

 

展示会などでNECの若い説明員と話すと、まじめで優秀な感じがして、こんな人が設計しているのだなという感じがして好ましいのだが、出している製品を見ると、要素の技術を活かしきれていない感じがする。IBM互換PCが出た時点でPCビジネスは世界市場で考えなければならなくなったのに、国内にPC98で構築した膨大な顧客基盤がある為に、そこに提供する自社ブランドの商品を兎に角作れ、というモーメントがあったのかも知れない。HP,DELL、Panasonicの様な製品全体を通す思想と戦略が見えなかった。 

 

IBMはなぜPC部門を売却できたのか?将来性が無いと判断し、もっともうかるビジネスに資源を集中しようとトップが判断し、その様に実行したからだ。多分現場は強硬に反対しただろうが、トップが理詰めで考え、決断したのだろう。 軍学でも、撤退を上手に行うことが戦に勝つ基本だという。筆者はIBMの子会社のロータスに勤務していたころ、IBMが事業方針を決定する際の大局観が米国政府のそれ並みであることに感心した記憶がある。

 

この上は一刻も早く完全撤退し、優秀な技術者を自社陣営に取り戻し、体勢を立て直して戦略的商品に注力されることをお奨めする。だが、提携相手に負けないだけの世界戦略とそれをセキュアに実行できる戦術が必要だ。