ブログ / Blog

宇宙戦争時代が現実になって来た(2011/10/30)

iPhone4SGLONASSをサポートする意味とは?

 

アップルがiPhone5を発表すると言っていたのが9月30日だった。代わりに発表されたのがiPhone4Sで、業界は「何だ、マイナーな変更じゃないか《という感じだが、実はiPhone4Sには重大な機能追加があったのだ。実はGLONASSをサポートする。

 

GLONASSは米軍が提供するGPSのロシア版で、ロシア宇宙軍が提供する。GPSが31個の衛星なのに対してGLONASSは衛星が27個だから立派なものだ。GLONASSはもう十分実用になっている。国土地理院も使っている。筆者は先月GPS+GLONASSのマルチコンステレーション対応の受信機ソフトをPCに入れてUSBコネクタにアンテナを差し込んで測位してみたのだが、都内のちょっと開けた公園で1メートルの精度で位置を検知できた。これならかくれんぼの鬼を見付けるのに十分な精度だ。GPSだけではそうはいかない。

 

昨年日本も準天頂衛星を1個打ち上げて、数十センチの精度を達成したと新聞に載っていた。此処へきて宇宙開発戦略本部は2020年まで3個(だったかな?)衛星を追加するコミットメントをした。何故追加するかというと、天頂衛星は日本と豪州間を8の字で移動するので、1個だと日本上空で使い物になるのは7時間程度しかないし、使っている間に精度も劣化するからだ。全部で4個あれば何とかなるという訳。欧州のガリレオは既に開始したし、中国やインドも自前の衛星を打ち上げる計画がある。だから、2020年には100個の測位衛星が地球上をぐるぐる回っていることになる。

 

地上にいるモバイルユーザは100個の衛星をつかったLBSLocation Based Service)を使いこなすことになるし、サービスプロバイダはこの地球規模のサービスインフラを使いこなしたサービスの熾烈な競争を繰り広げることになる。だからアップルのiPhone4Sはそれに対応したし、中国のHTCも同様にGPSGLONASS対応の端末を出すし、QualcomBroadcomGPS+GLONASS対応のチップを発表した。 

 

日本は未だGPSにしか興味がなさそうなので、この競争に乗り遅れるのではないか、心配だ。宇宙産業のこの部分はテレビ産業並に “コンシューマ化”が急速に確実に進むだろう。この変化には業界地図をがらっと変えてしまうパワーがある。

 

測位衛星には防衛という目的もある。GPSは米軍が軍事行動する時使えなくなってしまうことをご存知の方も多いだろう。中国やインドが熱心なのも、これが自国の安全保障に密接に関連するからだ。だから、GPSは米軍が、GLONASSはロシア宇宙軍が管理運用する。ところで、天頂衛星がハッキングされたりミサイルで攻撃された時誰がどうやって防衛するのだろう?航空自衛隊が戦闘機をスクランブル発進させても宇宙には届かない。米軍が守ってくれるのだろうか?当然政府は宇宙自衛隊を組織してそれなりに対応することになるだろう。 

 

宇宙が主戦場になるSFの世界ががもう目の前にある。というか、中国は既に地上から自国の衛星を破壊して、その技術の高さを米国に見せつけている。2007年のことだ。