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野田首相がTPPの交渉範囲について言ったとか言わなかったとか(2011/11/20)

そんなの、よくある話さ

 

11月18日の日経新聞に、「TPPを慎重に考える会」が先の日米首脳会談で野田首相がTPPに対象に何を含めるかについて言った内容が米側の発表と違っているので、政府に対して米側に訂正を求めさせる様決議したという記事が載っていた。

 

これに関連して思い出すことがある。筆者がノーザンテレコム(ノーテル)に勤務していた1990年代、ノーテルはNTT向け中型電話交換機のマーケティングに従事していたが、NTTにダイヤル104の番号案内用交換機を入札するビッドマネジャーをしたことがある。ノーテルは米国のA社にNTT商戦で勝って以来、総計500万加入者分の交換機を納めるという大成功を収めていたが、一方A社も失地挽回の機会を虎視眈々と狙っていた。当然、104番システムはノーテルとA社の一騎打ちになった。

 

何しろ総額100億円の入札だから、このプロジェクトは準備に1年間かかった。ノーテルジャパンの元社長と筆者が各々米国側と日本側の情報ノードになってプロジェクトを動かした。メンバーはベルノーザンリサーチ、マーケティング、営業、技術サポートなどほぼ全社体制だった。A社はかってノーテルに負けて以来のメンツがかかった勝負だったから、必死だったし、ノーテルとしてもいずれ無くなる中型交換機市場の後を取らなければ会社が持たなくなるので絶対取りたかったのだ。

 

両社共に入札し、NTT側の審査が始まり、NTTからの質問に回答する段階になった。担当営業はその様子を伝えてくれるのだが、或る時点から優勢だという情報が途切れ途切れになり、或る時、この入札は負けたという話しがそれとなく伝わってきた。その理由というのが、社内に広まった噂だったので真偽の程は不明だが、A社の会長が米国から直々にNTTの社長に面会に来て、その場で「104番システムを当社に是非お願いします」 と言った時、NTT社長が「そうですねえ」 と答えたのを、会長に従って来た通訳が「YES」 と訳してしまって、会長が「オー有難うございます」 とか言って感謝感激したので社長も後に引けなくなった、というのだった。これが事実ならば、この会長はかなりの役者ということになるし、日本を代表する企業の社長としては「言った、言わなかった」 の低レベルな話しはしたくなかったのだろう。

 

おかげでノーテル側の担当者は私も含めて社長室に集められてみっちり叱られる羽目になった。筆者はその後この敗戦からリカバリーする為に104番システムと似た116番加入者サポートシステムをNTTに提案することを社内で提唱した。こちらは順調に話しが進んで、NTTに104番システムとほぼ同規模のシステムを納めることができた。NTTとしては、ノーテルとA社のバランスを取るという配慮があったのかも知れない。

 

だから、野田首相の「言った、言わなかった」も余り騒ぎ立てる様なことはしないで、後日の交渉で何とかする方がスマートなのだ。第一、東アジアのパワーバランスの変化をみれば、どう対応するのが国益になるのか分かりそうなものだが。