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大航海時代を迎えた日本経済(2011/12/31)

2012年を飛躍の年にするために

 

12月29日の日経一面に「海外M&A過去最高。今年5兆円突破。」という記事が載った。同新聞10月30日の1面トップで「中小企業、海外に集団進出」という記事もある。「これまで地元企業の流出阻止に懸命だった自治体も国内拠点の存続を条件に中小の海外進出を後押しし始めた。」とある。円高の理由は金が上がるのと似た理由で、カジノ経済に向かっていたマネーが日本の実体経済の強さに金の様な安定を期待したからだろう。企業はそれに押し出される形で海外進出し、ビジネスモデルを、海外でかせいで日本に送金するモデルに適応しようとしている。

 

世界中のどのサーバーにも自由にアクセスでき、荷物が数日で海外の主要都市に届き、1日あれば世界の何処にでも自由に行き来できる時代にあっては国内と国外の意味するところがまるで違って来ている。前述の地方自治体はこのトレンドが未来数年にわたって変わることはないという予測のもとに、この環境に適応し地元の産業を生き残らせようという現実的な動きだ。

 

だから、地元の製造業が円高の為に廃業するのではなくて、海外に移転できるものは移転して地元にコアになる部分だけを残して互いに連携するというビジネスモデルを推進するのが最適解ということになる。工場で製造にかかわっていた社員も工場の海外移転先に移住してそこの給与レベルで働けば良い。失業するよりずっとましだ。そうして海外の出先で稼いだ利益は日本に送金し、それが巡り巡って国債の償還に使えるようにすれば良い。

 

農業だって製造業だ。例えば人工照明で行う水耕栽培は完全に工場のコンセプトだ。農民と呼ぶのは止めて農産物製造事業者と呼ぶと新たなビジネスモデルが浮かんでくる。高級食材は航空便で次の日には海外の店舗で売られるだろうし、日本で苗を育てて海外の農地に移植すれば戦略的種子を日本に留め置くこともできるだろう。

 

水道ガス電機交通システムの社会基盤を海外で構築し、その保守で何十年も継続して収益をあげるビジネスモデルは、大英帝国がインドの塩を専売にして収益を上げ続けた植民地モデルに近い感じがする。社会基盤を占有して参入障壁を高くし、安定した収益をあげるモデルはコンピュータのWinTelモデルとして諸兄は充分学習済みだろうから、それを日本の得意分野に応用しない手はない。IBMが既にそうしたモデルに切り替えて高収益をあげている。日本もパソコンビジネスなんかもっと早く見放すべきだった。外国企業が製造装置を日本から買って作れば既存の日本製に対抗できる製品や産業が日本で生き延びる術はない。

 

この様な国勢の海外伸張は大航海時代のスペインに重なって見える。新天地アメリカ大陸に進出したスペインは金を国内に持ち帰り、スペインは大いに栄えたのだった。21世紀の日本は実体経済の強さを背景に新しい大航海時代を迎えつつあると思えば未来は輝いて見える。

 

ポイントは何か?コピーできない部分を日本国内にしっかり留めておくことだ。ソフトで言えば、グローバルなクラウドを活用して、キーになるデータや処理を日本国内に設置したサーバーだけで行い、周辺の処理を現地のサーバーで行うことだ。ハードで言えば(その中のコアは主にソフトなのだが)コアモジュールをブラックボックスとして日本で製造しそれを海外の工場でアセンブルさせることだ。

 

問題は、それが出来る人材がいるかどうかだ。1980年代のバブル期、日本は海外の不動産などを買い漁ったけれど、外人をマネージできる人材が不足していた為に撤収に次ぐ撤収となった。だが、インターネット環境で育った世代にとって、海外と国内の垣根は既に無い。80年代の様な問題が発生するリスクは低い。

 

最大の問題は日本で最も遅れている産業(?)である政治だ。日本国内の県より狭い選挙区で、高々数万人から投票されただけの者が国を代表するなどおこがましい。このブログで既に述べた様に、国会議員は全て全国区にすべきだ。それが正確な民意の反映というものだろう。