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スペイン バルセロナから, Dr. Mehmet Unsoy 7回目のモバイル世界大会(MWC;Mobile
World Congress)2012は今年2月27日から3月1日までスペイン・バルセロナで開催されました。 事務局は出席者数が6万人以上と発表。 晴天のおかげで大会の雰囲気は盛り上がりました。 しかし、バルセロナでのローカルな労働争議や学生の抗議運動のせいで夜のプログラムに参加できなくなる事態がいくつか発生。
我々mSolveは40以上の国の100以上の企業、数百人のエグゼクティブとミーティングしました。とても忙しい週でした! モバイル産業の今後は?世界中、特にユーロ圏に大きな経済問題があります。 にもかかわらず1兆9000億ドルのモバイル産業は非常にうまくいっています。 欧州では2012年通信事業者の資本支出と個人消費がせいぜい昨年とほぼ同額だろうというのは本当です。 しかし北アメリカとその他の地域で成長しており、この産業を推進しています。 モバイルの加入者ベースは世界で53億を超え、世界の総人口のほぼ77%をカバーするに至りました。 この成長は発展途上国、特にインド(8億5000万加入者)、中国(9億7300万加入者)の需要が推進しています。 中国は今年中に加入者数が10億を超えると見られています。これは素晴しい業績です。 モバイル産業は「革新の推進者」として他の産業を進化させ、時には業界に分裂や混乱をもたらしています。
我々はモバイル技術が音楽、映画、ニュースなどのデジタルメディア産業に大きなインパクトを与えるのを見てきました。 モバイル技術のおかげでコンテンツ配信の方法やそのビジネスモデルも大きく変りました。
さらに、MWC 2012ではモバイル技術がバンキング、支払、送金、eコマースなどの金融分野へ与えたインパクトも疑う余地がありませんでした。NWCでは革新的な企業数社がモバイルマネーに関して(例えばビザやマスターカードとの)パートナーシップに関する重要な発表をおこない、展示していました。交通産業、エネルギー分野もモバイル技術の影響を受けました。特に興味深いのは医療分野です。これらの分野ではモバイル技術を使って業界を再定義する試みが多数見られました。例えば、基調演説でフォードのCEOはモバイル技術会社に車関連のサービスを開発する様勧めていました。彼は、車というのはモバイルにとって「大きな未開拓の機会」であり、インテリジェントカーやスマートな輸送システムを強調していました。モバイル技術が世界経済の「大きな変化要因」になったという認識は広く普及しています。 モバイルブロードバンドは発展途上国には特に重要です。 従ってLTEは成熟市場より新興市場でより大きい意味を持ちます。 世界銀行は(例えばLTEにより)ブロードバンドの普及率が10%を増えた国はGDPが更に1.3%成長するだろうと見ています。
ユビキタスモバイルブロードバンドはこれらの国の経済発展にとって水や電気と同じくらい重要になりつつあります。 OTT (Over the
Top)事業者の役割は議論の大きな話題でした。 OTT 事業者は通信事業者のモバイルネットワークを使って付加価値サービスを提供します。モバイル通信事業者はモバイルブロードバンドとLTEに莫大な投資をしています。 出来上がった超高速通信網が土管にすぎず、OTT事業者に収益の機会を提供するに過ぎないということになれば、巨費を投じてLTEネットワークを構築する正当性が無くなります。 一方、モバイル通信事業者がOTTのために通信速度を低減する措置を取れば、我々は「ネットの中立性」という問題に突き当たります。
採るべき方法は、モバイル通信事業者がVoLTE(LTE上の音声サービス)、モバイルビデオ、RCS(リッチコミュニケーションサービス)のようなサービスをLTE上で自社サービスとして出来るだけ早く、積極的に展開することです。 これについて後で更に説明します。 MWC 2012の間、GSMA会長(テレコムイタリアの会長でもある)は、OTT事業者に関する重大な懸念を提起し、彼らに通信生態系に本当の価値を提供する様要求しました。彼は、通信産業(モバイル通信事業者がほとんど)が今後4年間に8000億ドルの資本支出をする予定であり、これは世界で2兆7000億ドルの公的資金と同等の貢献をすることになるということを示しました。 OTT企業は同額の投資を行い、この産業の成長に参加するべきです。 興味深いことに、StarhubのCEOは、モバイル通信事業者自身がOTTになったり、OTTとパートナーシップを締結するかもしれないと示唆していました。
ポリシー管理技術はこのような柔軟性をモバイル通信事業者に提供できるかも知れません。 LTEの展開と商用サービスはもう現実になっています。 実際、LTEは開発が最も速いモバイル技術であり、それには主にモバイルインターネットアクセスの需要が影響していました。 今日、約50のライブLTEネットワークがあり、30か国で1000万人がLTEを使っています。 2016年までに200のライブLTEネットワーク70カ国で提供され、約5億人がLTEを使うだろうという予測があります。 LTE商用サービスを展開している通信事業者が非常に多かっただけでなく、携帯端末メーカーも非常に速くLTE対応の機器を市場に提供しました。 これは過去の2G、2.5G、3Gの携帯電話機の時の様ではありませんでした。 Wireless Intelligenceによると、LTE対応端末は来年発売される端末の20%を占め、2014年には33%成長し、2015年までに50%成長すると見られています。 MWC 2012年の間、LTE関連の発表が多数ありました。 NSNは今日までのLTEの商用サービスの概数(52)を発表していますが、他の事業者もそんなに遅れてはいません。 韓国では2014年までに全加入者の半数以上がLTEを使い、その様な高い普及率を達成する最初の国になるだろうと期待されています。 エリクソンは音声サービスのためにVoLTE(LTEの上の音声)と3G/WCDMAの相互運用性をデモしました。これはLTEから3G網に音声をフォールバックする上で重要です。 VoLTE互換のネットワークと機器の発売は今年末始まると予想されています。ビデオ会議はLTEのキラーアプリになるでしょう。しかしこのサービスが離陸するには端末間の通信品質保証が非常に重要です。 LTEインフラに関して、小セル技術が注目されています。 Alcatel-Lucent (LightRadioキューブ)、エリクソン(Wi-Fiによるmulti-standard pico)、Huawei(アトムセル)、NSN(Flexiゾーン)などの複数のメーカが新型の小セルの地上局をデモしていました。2016年には全地上局の90%が小セルになるという研究もあります。 ネットワーク最適化は再びホットな話題になっています! モバイルインターネットの重要性が高まっており、帯域幅の需要と供給間のギャップが増えています。
ほとんどの通信事業者が、ますます高まる需要を満たす適正なソリューションを見付けようと苦労しています。 インフラ設備をもっと多く建設することは1つのソリューションになります。
もう1つのソリューションは既存のインフラ設備を最適化することです。業界はモバイルネットワークの最適化のために自律的に網を構成するSON(Self-Organizing Networks)の方向に動いています。 MWCではこの技術に関するリーディングカンパニーが複数ありました。
別の主要なイニシアチブはWi-Fi Offloadです。これは、データトラフィックの一部をWi-Fiネットワークに負担させ、セルラーネットワークの利用効率を上げる技術です。エリクソンは最近BelAirを買収し、MWCではWi-Fi Offloadがより多くの注目を集めていました。 我々はこの新エコシステムの価値について少なくとも4社と話しをしました。ご興味あればお知らせください。 2011年スマートフォン販売は4億8000万台に達しました。 その49%がアンドロイド端末です。これはGoogleのアンドロイドオペレーティングシステムの圧倒的な成長で、タブレット市場の約29%を押さえています。
アップルのiOSはオペレーティングシステムのナンバー2ですが、2011年Q4には4900万台のiPhonesを販売し圧倒的な強さを見せました。これは同四半期の24%の市場を占有したことになります。 最も興味深いのは、多機能電話からスマートフォンに至るモバイル産業の変遷の中でアップルは2011年に330億ドルの利益を上げたリーダーだということです。 クアドコア・スマートフォンとタブレットはMWC
2012では「新顔」でした。 クアドコア・スマートフォンとしてHTC(One X )、Huawei(Ascend)、LG(Optimus 4X)、ZTE(Era)が発表され、デモされました。 Huaweiは自社のAscendが世界最高速のスマートフォンだと発表しましたが、それは同クラスで最も低価格だとの噂もあります! マイクロソフトWindowsフォンでは、特にLumiaモデルの様なノキア端末は非常に魅力的な機能を備え、噂の的になっていました。
新しいノキアの端末Lumia 610の価格はヨーロッパで約150ユーロで、最も安いWindowsフォンとして期待されています。 WindowsフォンはiOS、アンドロイドに続く第3のスマートフォン用オペレーティングシステムです。 今年末リリース予定のWindows8は皆が内容を予測しあっていました。 スマートフォンを世界中でより広く使える様にするため、Airtel、VimpelCom、Telefonicaラテンアメリカなど主要通信事業者数社は数年前30ドル以下のフィーチャーフォンを使ってGSMAを推進した様に、50ドル以下のスマートフォンを要求しました。 この、より低価格のスマートフォンは新興市場で、特にLTEネットワークを展開する国でモバイルのインターネットトラフィックを間違いなく増大させるでしょう。 モバイルメッセージングとRCSは再びニュースになりました。 GSMAはjoynというブランドでRCS(リッチ通信サービス)を立ち上げました。 モバイル通信事業者はこのブランドを一般的なサービスに使いますが、特にOTT事業者に対してもっと効果的に競合するために使います。 オレンジのスペイン部門、Telefonica、ボーダフォンはRCSの展開を始めており、今夏サービスをスタートする予定です。 フランス、ドイツ、イタリア、韓国の通信事業者も今年RCSサービスを始めることを約束しました。 数社がスマートフォンとタブレット用のRCSクライアント端末を発表しました。 モバイルマネーは新しい流行語です! MWC
2012年ではm-ペイメント、m-コマース、モバイルマネーに関する様々な面について熱心に語られました。 Near Field Communication (NFC近距離通信)は議論と討論の中心です。 Paypalのような会社はNFCの必要性を訴えており、今年のモバイルペイメントの支払額は70億ドルになるだろうと言っています。一方アップルのような主要プレーヤー数社は自社独自のm-ペイメントソリューションを用意している様に見えます。 NFCは列車やバスに乗る通勤者に最適かも知れませんが、他のモバイルマネー取引にとって必要無いか、実用的でないかもしれません。
しかし、VISAがNFC準拠のスマートフォンとして認証した様な、関連する発表がいくつかありました。
端末メーカーはNFC対応であることをVISAに認証してもらおうと自社の端末を提供しています。 フランス、日本、韓国、トルコ、英国でNFCの商用サービスが展開中であり、世界の他の多くの国で試行中だという発表がありました。
スティッカー、マイクロSDカード、ソフトウェアソリューションなど、複数の「暫定的な」NFCアプローチが業界にはありますが、GSMAが促進するソリューションはSIMカードを使ったアプローチです。 ちなみに、NFCはむしろアプリを可能化する技術であって、活用分野はモバイルマネーに限りません。モバイルマーケティング、オフィスへのアクセス制御、駐車場、車のドアの解錠などにも使えます。 MWCで議論されたもう1つの問題は、アップルがNFCで何をするか、特に今年末リリース予定のiPhone 5についてでした。 iPhoneのアプローチがSIMカードやモバイル通信事業者を使ったものではなく、むしろiTunesを使うという可能性があります!
アップルiTunesユーザーはすでにクレジットカードと連携しており、アップルは、これをもっと広範囲に様々なモバイルマネーの取引に使うかも知れません。これはもう1つのOTTソリューションになります。 モバイル財布についてもMWC 2012で熱く語られました。
グーグルウォレットに加え、IsisがMWC 2012で提示されました。IsisはAT&T、Tモバイル、Verizonのジョイントベンチャーであり、今夏米国の2個所で複数の主要パートナーとNFCベースのトライアルを始めるとの発表がありました。 アプリ開発の環境生態系に関して、最も討論された質問は、HTML5がすべてに対する答えになるかどうか、の様です。
明らかに、そうではありません。ネイティブのアプリには未だ多くのメリットがあり、それらは少なくとも近い将来HTML5によって置き換わることはありません。 MWC 2012の主要テーマの1つは「接続された未来」または「ネットワーク化された社会」でした。エリクソンのCEOは基調演説で、2020年までに500億個の機器が接続され、それに関連する挑戦とチャンスを強調しました。 Machina研究所を擁するGSMAは、接続された機器市場は2020年までに4兆5000億ドルに達するという研究を発表しました。
この分野の最大のアプリケーションは「接続された車」であり、その規模は約6,000億ドルです。(だからフォードCEOがMWCにいたのです) 続く2つのアプリは健康関連であり、その規模は合わせて約6200億ドルになります!
従って、モバイルヘルスケアと輸送は今後数年間インターネット関連の最大の市場になるでしょう。 インターネット用の周波数帯域として、我々はTV用の周波数帯域をホワイトスペースとして得ています。いくつかの企業がこのホワイトスペースに関連するソリューション開発をリードしています。 最後に、NWC2012での主なGSMA賞受賞者は以下の通りです
来年、MWC 2013は再びバルセロナで2月25日~28日開催予定ですが、開催場所はFira de Barcelona Grand Viaに変更になります。こちらの方がずっと広く、モバイル世界大会にとって適しています。
そこでお会いしましょう。 敬具 Mehmet. Dr.MehmetはmSolveパートナーズのマネージングパートナーであり、KenConsultingのExecutive Advisorです。 mSolveパートナーズLLCは、モバイル分野の企業に事業開発などのアドバイスを提供する会社です。mSolveはモバイル分野の主要企業の起業家、投資家、リーダーとともに働き、企業にとって最も重要な戦略と財務目標を達成するべくサポートを提供します。mSolveは世界中にいる17人のプロフェッショナルと20人のアドバイザーのチームで構成します。 この記事に関する御質問などはsupport@kenconsul.comにお願いします。 |