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朝日新聞的な平和国家思想のルーツ(2013//5)

前提条件が変われば思想も変わる.

 

4月29日の朝日新聞天声人語欄に、3月15日亡くなった憲法学者作間忠雄氏の紹介が載った。曰く「(学徒出陣から)復員し、憲法研究者になった。93年に本紙『論壇』に寄稿している。先の大戦が『侵略戦争』だと言うなら兵士らは『犬死』だったのかという議論が起きていた。断じて違うと作間さんは書いた。『彼らは【日本国憲法】に化身して、平和日本の礎となったと私は確信している。」。

 

 友人達を特攻で失った氏は「論壇」にこう書いている。「私たちの結論は次の通りであった。『この不法・無謀な戦争には反対であり、戦争は直ちにやめるべきである、しかし、それができなければ、今はただ親兄弟、同胞を守るために(戦って)死ぬ他はない』『もし、日本民族が全滅しなければ、生き残った人たちが協力して今までと違う日本を造って欲しい」。(カッコ内は筆者)

 

朝日新聞的な平和国家思想の源泉がここにあるのではないかという感じがする。思想が成立するにはその前提条件がある。共産主義思想の前提条件の1つは発生当時の科学技術に対する過大な期待だった。終戦当時の状況を前提に成立した平和国家思想を戦後60年に亘って実現できたのは、日本に再軍備させたくないという戦勝国の意思と、日本が自国の安全を米軍に頼り切っていられたという「幸運」が基になっていたのではないか?60年経ってその前提が変ったなら、思想自体を再点検した方が良い。 北朝鮮からミサイルで狙われ、中国に尖閣や西太平洋の島々が侵略されかける等々の状況を作間氏は恐らく前提としてはいなかっただろう。この状況に作間氏の「今はただ親兄弟、同胞を守るために(戦って)死ぬ他はない」を重ねてみるとどの様な思弁が展開できるか、興味深い。