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反原発運動家の胡散臭さ(2013//18)

政治家とマスコミは科学技術にもっと敏感でなければ

 

雑誌「日経ビジネス」5月13日号の144ページに創業支援推進機構理事長の紺野大介氏が「次世代原発政策 トリウム溶融塩炉の選択肢」という題で紹介記事を載せている。従来のウラン軽水炉に対して多くの点でメリットがある。曰く、プルトニウムを生成しない、メルトダウンの可能性が原理的に無い、爆発の危険が極少、放射能の拡散リスクが極少、核資源が広く分布、再処理費用が易く原発施設内で再処理可能、発電費用が小さい、など良い事ずくめだ。

 

記事は「国際競争社会の中で自分から弱くなっていくことを是とするならともかく、成長戦略を基盤に据えるならば、エネルギーの安定供給は必須である。(中略)トリウム熔融塩炉の検証に向けた早急な政策的誘導が求められる。」と若干の皮肉を込め、具体的方策を提言して稿を結んでいる。

 

3・11発生時に首相だった東京工業大学卒業者は原子炉技術に詳しいと自称して問題を起こし、後に反原発運動の先鋒に立ったが、溶融塩炉のことを知らなかったのだろうか?知っていたとすれば彼の反原発運動と運動家達とそれを積極報道したマスコミには別の目的があったと考えるのが自然だ。知っていなかったとすれば一国の政策をリードする者として勉強不足ということだ。

 

技術を基盤とする製品やサービスは、「出たばかりのころは未熟で欠点だらけで、それが市場で使われてゆくにつれ徐々に改善され、成熟し、安定期に入る」のが常だ。多くの家電がそうだ。自動車はその意味で青年期を脱しようとしている様だ。筆者は、原子力発電も例外ではないから、時間が経てばもっと安全な技術が出てくるだろうが、それにしても事故に対する被害が大きすぎるのは技術の筋が悪いのだろうと考えていた。自動車なら事故っても人が数人死ぬだけで限定的だが、原発はそうはいかない。だから自動車の増殖(普及)は許されたが、原発普及を正当化する為に人々は、絶対安全だという信仰(思考停止)に逃げ込んだ。

 

こういう観点からの解説/評論は、筆者は寡聞にして聞いたことがない。政治家やマスコミがこの技術の持つ本質をもっとわきまえていたら、国家国民の安寧にもっと貢献できていただろう。